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映画「沈黙-サイレンス」の感想

江戸時代の長崎を舞台にしたこの作品、実は全くの作り話ではなくて、本当にあった出来事や人を元に書かれているそうです。

詳細については、こちらからどうぞ

結構、原作に忠実に映画が作られている事に驚きました。

当時のボロボロさと「匂い」を上手に表現

映画の中に出てくる、日本の隠れキリシタン達の風情は、本当にその当時こんな感じだったんだろうな…と思われるように、かなりリアルです。髪の毛もバサバサ、顔もドロドロ、着物も本当にボロ布同様な代物です。

私達がドラマで見る時代劇に登場する人たちって、そういえば、農民も貧しいとはいえ、結構きれいな感じだし、この映画「沈黙―サイレンス」に出てくる程、ボロボロじゃないような感じがしました。

また、小説では上手に描かれていた、各シーンでの「匂い」の強烈さが、映画にも引き継がれるのかとても興味がありました。

小説では、ポルトガルからやってきたイエズス会の宣教師の目線を通じて、そういう日本の状況が上手に語られていました。やっぱり、遠藤周作はうまい作家ですね。

まるで現代に住む自分たちがその世界をどう感じるかを、この宣教師が代弁してくれているような気がしました。

さて、その当時の「匂い」なんですけど、昔から時代劇の「匂い」っていつも気になっていたんです。 現代ではない昔って、一体どんな「匂い」がしていたんだろう〜って。

武士たちでもそうなんですけど、特に貧しい農民だったら、石鹸なんて持っていないからお風呂に入っても、お湯につかる程度だったかもしれない…。

着物だって何枚も持ってないだろうから、きっと着たきりスズメだったにちがいない。 歯磨きをする事もなかっただろうから、きっとすごい体臭と口臭があったんじゃないか…。

そういう農民たちや、その付近の「肥やし」のような匂いが、登場人物たちの小汚さとか、顔のドロドロさで表現されているのがよくわかりました。

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あまりにも残酷な隠れキリシタンへの弾圧

小説の中にも何度も登場していたのが、隠れキリシタンたちを痛めつけるシーンの数々です。弾圧は大変重要なテーマだけに、それを飛ばすわけにはいかないのですが、実を言うと…映画を見る前からそれがとっても怖くて怖くてたまりませんでした。

中でも、私が一番怖いと思っていたのが「穴吊り」という刑のことでした。。。。

人間をぐるぐる巻きにして、頭を逆さまに逆立ちした状態で吊り下げて、汚い穴の中に頭を入れて苦しめるという方法なのですが、これは実際に隠れキリシタンを改宗(転ばせる)させるのに、一番よく用いられた方法だったそうです。

映画では、どういう風に描かれるのかちょっと心配でした。

残酷なのでもしかしたら映像化されないかもしれない…とも思いましたが、やはりこのシーンは出てきました。

映像化されると、その「匂い」の強烈さと狭さが具体化されたので、恐さが倍増したような気がしました。私には、とうてい我慢する事なんてできないだろうと思います。

隠れキリシタンたちが信じていたキリスト教とは?

殉教の死も恐れずに、隠れキリシタンたちが守った信仰。

江戸時代の貧しい農民の生活を見ていると、神の存在なしでは毎日を行きていくのも大変だろう、神様に頼るのは当然の事なのかもしれない… と感じさせられたのですが、

ただ、物語の中で、教父フェレイラが言う言葉…

この国は沼地だ …. 恐ろしい沼地だった。どんな苗もその沼地に植えられれば 根が腐りはじめる。葉が黄ばみ枯れていく。我々はこの沼地に基督教という苗を植えてしまった。

という表現の通り、イエズス会が日本に持ち込んだキリスト教は、日本という沼地の中で腐り、そして全能の神(デウス)は、いつの間にか、日本人が思う別の神の存在に変えられていった、というのです。

では、彼等が信じていた信仰とは、彼等はキリスト教だと思っていたけれど、一体何だったのでしょうか?

それは「大日」と呼ぶ信仰だった、と言って、映画の中では「太陽」が映し出されていました。

故遠藤周作氏は、カトリックの洗礼を受けたと言いながらも、実は信仰についてずっと葛藤を続けていたと聞いています。

もしかしたら、遠藤氏が信じていたものは、このフェレイラが語っていた「いつの間にか変わってしまった日本的なキリスト教」だったのかもしれない、とふと思うのです。

今の日本で、日本のクリスチャンの人口は全人口の1%に満たないという現実は、やはり「この日本という沼地に巻かれた種が、腐って育たずに、全く別のものに変わってしまっている」ためなのでしょうか?

映画「沈黙-サイレンス」の評価は?

映画「沈黙-サイレンス」、見終わった後もずっと心に残る、素晴らしい作品だったと思います!

宗教や神の存在について、もう一度考えてみるいいチャンスになると思います。ひとりでも多くの方に見て頂きたい作品です。

私の評価は A です。

いろいろ情報あいうえお 【映画の評価基準】について

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