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映画「夜に生きる」のネタバレ感想
映画のストーリーにかかわる大きなネタバレが含まれています。もし、映画をこれから見ようと思っている人はご注意下さい。
ベン・アフレック演じる主人公について
ベン・アフレックの演じているジョーという男性は、銀行強盗をしたりするアウトローではあるけれど、でも自分の人間としての信念は、きちんと持っている人だなと思います。
この時代、白人と有色人種の間には歴然として差別が残っていて、法律でもそれが禁じられていたのに、キューバ出身者の思想に共鳴し、キューバ出身の女性と恋におちて結婚もしてしまうのです。
また、自分の仇だったマフィアのボスたちを次々と殺して、これからは自分がマフィアのボスとして君臨できる地位についた時に、あっさりとその地位を自分の相棒に譲って、ただの父親になるってのも男のロマンっていう感じで、カッコイイというか、カッコよすぎですよね。
ベン・アフレックが、今回この映画を製作、監督、脚本、主演をしたって事は、よっぽどこの作品にほれこみ、それを映画化したかったって事だと思うのですが、でも、それがどういう意図だったのか、この映画を見ても、私にはよくわかりませんでした。
こんな言い方をしては申し訳ないけど、人種差別にも負けない、ちょっとカッコイイ、ハードボイルドなギャングを演じたかっただけ?なんて、ふと思ってしまいました。
エル・ファニングのすごい存在感!
実は、私がこの映画の中で1番印象的だったのは、エル・ファニングが演じているロレッタという女性の事です。
ロレッタは、女優になる事を夢みて、フロリダからカリフォルニアに行くのですが、そこで悲しくも麻薬漬けにされてしまいます。
彼女はその後、故郷に戻りキリスト教の伝道師になるのです。
でも、自慢の娘だったロレッタが、そういう目にあって戻ってきた事を、彼女の父親はどうしても許す事ができないのです。
美しく若いロレッタは、その後、自らの命を断つ事になってしまいます。
この頃の時代、ロレッタのように女優を目指したものの、彼女のように悲しい結果になってしまった人というのは、この時代多くいたのかもしれませんね。
ところで、エル・ファニングは、1998年生まれで、まだなんと18歳(2017.3月現在)です。
お姉さんは、名子役としても有名だったダコタ・ファニング。
エル・ファニングは、2001年に映画デビュー以来、最近では姉よりも妹の方が活躍しているんじゃないか? という位、数々の映画に出演しています。
2016年アマゾンが製作した、ファッションモデルの世界を描いた「ネオン・デーモン」という映画(日本では2017年2月に公開)でも、その圧倒的な存在感で映画を引っ張ってました。
エル・ファニングは、顔やスタイルが完璧なのですが、ただそれだけじゃなくて、心に闇をかかえたロレッタという女性になりきっていて、ちょっと登場するだけで、忘れられない存在感を残していたという点からも、完全に主役のベン・アフレックを凌駕していたと思います!
クリス・クーパーの悲しさ
また、ロレッタの父親役を演じていたのが、名俳優のクリス・クーバーです。 この人が出てきたら、良さそうな人に見えていても、絶対何か裏がある..というような役を得意とする俳優です。
この映画でも、やはり案の定そういう役だったのですが、でもこういうすごい俳優が脇をしめる事で、映画に重みが生まれるんだな〜という事を実感させられました。
この映画では、このロレッタとロレッタの父親の存在が、この映画を支えているといっても過言ではないような気がしました。
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シエラ・ミラーがメイクで別人に!
シエラ・ミラーは、ブロンドの可愛いタイプのイギリスの女優ですが、この映画では、すれたギャングの情婦を演じていて、赤のドギツイ口紅と、白塗りに近いメーキャップがあまりにも似合いすぎて、ぱっと見では、それがシエナ・ミラーだとは全くわからないほどでした。
後で、あの女優誰だったのかな?と調べて、それがシエナ・ミラーだとわかり、びっくりしました。役になりきっていたんですね。
ああいうメーキャップは、当時の流行だったのか、ちょっと退廃的なものを感じさせられます。
人種差別主義KKKへの苛立ち
この映画でも登場する、アメリカ南部を舞台にした映画に良く出てくる、白い三角帽をかぶった、白人至上主義者集団のKKK(クークラックスクラン)って信じられません!
白人だから、自分たちは他の人種より優れているなんて、本当に言いがかりもいいところです。
クリス・クーパー演じているアーヴィングの妻の弟が、KKKに所属していて、本当にアホな人なんですけど、白人だからってだけで、KKKとして権力をふりかざしているのを見ると人間としてすごい怒りを感じます。
KKKは、禁酒法の初期の時代(1920-1924年頃)には、構成員がなんと約5百万人ほどいた!そうです。 ところが、KKKが過激化し建物への襲撃したり、指導者の有罪判決などが理由で、その後、200分の1程度に激減したそうです。
現在でも、アメリカ南部を中心に5000人から8000人程いるそうです。ちょっと怖いですね。
アメリカでは、トランプ大統領が誕生し、アメリカだけでなく世界中をかき回しているのですが、こういう白人優位主義的な大統領が選ばれてしまったって事は、人々の心(特に白人)の中に、それを支持したい気持ちがある事を証明していますよね。
ベン・アフレックは、自分はそうじゃない!って事を、この映画を通じて言いたかったのかもしれません。
映画「夜に生きる」の評価は?
ベン・アフレックがすごい情熱で作った割に、映画としてはあまり深いものが感じられなかったな〜というのが本音で、わざわざ、映画館へ見に行く必要はないような気がします。
日本ではまだ公開されていませんが、これまでの興行収入は1650万ドルのみ。映画の制作費だけでも65億ドル、その他の広告宣伝だけでも、10億ドルもかかっているらしいので、完全な赤字のようです。
アカデミー賞にノミネートされていたら、また違う結果になっていたかもしれませんが、今回はそれも全くなかったのも影響しているんでしょうね…。
映画作りの事はよくわからないから、私の素人考えなんですけど、
やっぱり映画って大勢の人との共同作業で作り上げるものだと思うから、一人の人(今回だと、ベン・アフレック)が、製作・監督・脚本・主演と、何もかもに関わってしまうと、他の人が意見が言いにくくなって、独りよがりになってしまう可能性があるような気がするんです。
それが、映画の失敗につながったのかもしれないですね。
というわけで、私の評価は C です。
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