映画「犬ヶ島」は、ウエス・アンダーソン監督の日本と黒澤明監督への「愛」とこだわりに溢れた作品。日本公開は2018年5月25日ですね。私もアメリカで見てきました。

監督が映画の中で特にこだわって作ったポイント5点と、現地アメリカでの観客の反応はどうだったのか、私の隣で見ていたアメリカ人家族の情報や私の感想も交えながら、今回はネタバレ無しでご紹介いたします。

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映画「犬ヶ島」の感想

「犬ヶ島」の予告編を見た時の、私の衝撃と言ったらどう言い表わせばいいのでしょう!

「え!!!、こんな日本が舞台で、日本語と漢字がたくさん出てくる映画がハリウッドで製作されていたなんて…!」という感じでしょうか?

日本を離れて海外に住んでいると、「日本への思い入れ」が日本に住んでいる方よりもすごく強くなってくるので、日本が舞台、漢字が出てくる!というシチュエーションには、かなり興奮してしまうのです。

ただこの映画に出てくる日本語は、確かに日本語で、発音も日本人が話すようなサウンドの日本語なんですけど、何故かとても不自然な気がしました。

音だけは、確かに「日本語」なんだけど、意味が頭にすっと入って来ない、まるで外国語のような日本語なんです。

ウェス・アンダーソン監督が英語で作ったものを、日本語に翻訳したから、ということになるんでしょうか。

日本語を使ってくれたのはうれしかったけど、その点はちょっと残念でもありました。

映画「犬ヶ島」注目のポイント5点

この映画の中で、アンダーソン監督が特にこだわった「ポイント5つ」をご紹介していきます。

1.登場人物は「自分の母国語のみを話す」

この映画では、登場人物は「自分の母国語のみを話す」と最初に限定されています。

つまり、「外国語の吹き替えも字幕もないよ!」って事なので、日本人は日本語で、アメリカ人は英語で話すことになります。

2.犬は例外で英語を話す

でも、この映画のメインキャラクターである犬たちの言葉だけは例外で、言葉を全て英語に訳すと最初に約束されています。

犬も日本に住んでいる犬だから、本当だったら日本語で話すべきなんでしょうが、そうしてしまうと日本語がわかる人以外は、セリフがが全くわからなくて、この映画が成り立たなくなります。

日本での公開では、英語版と吹き替え版の2つがあると思いますが、この条件は英語版だけに当てはまるってことですよね。

3. 言葉は全て日本語で表記

この映画では、映画に出てくる言葉がすべて日本語でも記載されています。

最初も最後のエンドロールも、すべて日本語付きです。

ゆっくり日本語で何が書いてあるのか読みたくなるけど、映画はどんどん超スピードで進んでいくので、それをひとつずつ検証する事ができないのが、とても残念でした。

DVDで見るなら、その都度ストップして見る事ができるから、映画がもっと楽しめそうですね。

4.映画の舞台は「めがさき市」

映画の舞台は、「めがさき市」という架空の市です。音だけで聞いてたら「長崎市」に聞こえます。

めがさき市の「めが」の部分は漢字がないので、カタカナの「メ」と「ガ」を上下にくっつけて漢字のような文字を作っているのにも、監督のこだわりを感じます。

5.黒澤明の世界を表現

この映画は現在から20年後の日本が舞台なのですが、日本人の眼から見ると、軍国主義の昭和の日本がそこにある感じです。

事実、この「めがさき市」の小林市長の存在は、軍国主義で国民を統制するのです。

何故、20年後の日本が昔の昭和みたいな感じなんだろう…と不思議に思っていたら、アンダーソン監督が、黒沢明監督の大ファンなので、あの世界をこの映画の中で表現したという事のようです。

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映画「犬ヶ島」の豪華な声優たち

この映画のすごいところは、とにかく声優に超豪華俳優が集まっている事です。

犬たちのリーダー格「チーフ」の声は、ブライアン・クランストン

アメリカでは伝説化した、私も大好きなドラマ「ブレイキング・バッド」でブレイクした俳優で、もう60代なんですけど、声も低音で渋く、とにかくカッコイイ俳優なんです!

その他メインキャラクターの犬たちの一匹「レックス」の声はエドワード・ノートン。 エドワード・ノートンも演技派俳優ですが、かつて大阪に住んでいた事もある点も考慮して、抜擢されたのでしょうか。

その他ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドプラム、ハーベイ・カイテル、リーブ・シュレイバー、F・マーレイ・エイブラハム等、ハリウッドで大活躍中の俳優の方も、みんな犬の声で参加しています。

日本でも人気の女優スカーレット・ヨハンセンは、ブロンド風のおしゃれな犬「ナツメグ」の声。声だけを聞くと、え、これがスカーレット・ヨハンセンの声? というようなハスキーな印象の声でした。

また、日本語を英語に翻訳する意味で出てきていた女性の声は、映画「スリービルボード」で2018年のアカデミー賞主演女優賞をとったフランシス・マクドーマン

日本人では、渡辺謙さんや、オノ・ヨーコさんは本人の役で登場、また夏木マリさんも 声優として登場していました。

映画「犬ヶ島」アメリカ人の反応は?

映画館で、私の隣には、アメリカ人の母親と小学校低学年らしい女の子2人が座っていました。

アメリカの映画館 空席

アンダーソン監督の日本へのこだわりは、日本語がわからない人々にとっては、日本語が字幕なしで出てきたら意味不明だし、監督のこだわりポイントもよくわからないように思うけど、大丈夫かな ????

私が責任を取る必要もないのに、アメリカで日本を代表しているような気持ちになってしまって、子どもたちに楽しんでもらえるかとても心配だったので、映画を見ながらも隣のアメリカ人の家族の様子をさぐっていました。

実際、アメリカでも映画の評判はとてもいいので、犬がたくさん出てくる子供向けの映画だろう、と思って、家族3人でやってきたんでしょうね…。

アメリカの映画館ではおなじみの、大きな巨大なバケツのような容器に入ったポップコーンと、各自炭酸飲料の入ったカップを持って、映画を楽しむ準備万端で映画に臨んでいました。

ポップコーン
画像: pixabay

子どもたちの母親は、映画の序盤の方では楽しそうに笑っていました。でも、それ以降あまり大きな反応はなかった気がします。

一方、気になる子供たちの反応はというと….

結局映画の最後まで、女の子たちは全くの無言のままで、笑い声も何も一言も出ないままでした。

私の心配は的中してしまいました!

犬はたくさん出てくるし、ストップモーション・アニメだし、一瞬子供に受けそうに見えるけど、その内容は一体何のことなのか、大人にも子供にもわかりいくい映画だったんでしょうね。

映画が終わるやいなや、明るい笑顔で映画館を出ていく様子を見て、難しい映画が終わってホッとしたのかもしれないな…なんて思ってしまいました。

映画「犬ヶ島」のまとめ・評価

いろいろ情報あいうえお 【映画の評価基準】について

映画としては、かなり実験的な意味も含まれている「犬ヶ島」。

マニアックな映画なので、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、日本を舞台に作ってくれて、本当にありがとう!という感謝の意味も含めて、私の評価は、Aに近い B です。


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